データ分析で現状を理解する!データ比較の基本【入門】
データ分析をはじめる皆さん、こんにちは。「データ分析はじめてガイド」編集部です。
データ分析と聞くと、難しそうな計算や専門ツールをイメージするかもしれません。しかし、データ分析の基本は、実はとてもシンプルです。その中でも特に重要な考え方の一つが「比較(ひかく)」です。
今回は、データ分析における「比較」の基本について、未経験者の方向けに分かりやすく解説していきます。
データ分析で「比較」が重要な理由
私たちは普段の生活でも無意識のうちに何かを比較しています。
- スーパーで商品の値段を比べて、どちらがお得か判断する。
- 去年の健康診断の結果と今年の健康診断の結果を比べて、体の変化を知る。
- 友人の成績と自分の成績を比べて、自分の位置を知る。
このように、何かを「比較」することで、その対象が「良いのか悪いのか」「増えているのか減っているのか」「他のものと比べてどうか」といった「現状」や「違い」を理解することができます。
ビジネスの世界でも同じです。データ分析において「比較」は、現状を正確に把握し、適切な意思決定を行うために欠かせないステップです。
- 「先月の売上と比べて今月の売上はどうだろう?」
- 「A店舗とB店舗ではどちらの売上が高いだろう?」
- 「目標としていた数値に対して、現在の実績はどうだろう?」
これらの疑問に答えるためには、データを比較する必要があります。比較することで、問題点が見つかったり、成功要因が明らかになったりします。
データ分析で「何を」「何と」比較するのか?
では、データ分析では具体的にどのような比較を行うのでしょうか? いくつか代表的な例をご紹介します。
1. 過去との比較(時系列比較)
最もよく使われる比較の一つです。「時系列(じけいれつ)」とは、時間の流れに沿って並んだデータのことです。
- 例:
- 「今年の売上は去年の同じ月と比べてどう変化したか?」
- 「ウェブサイトのアクセス数は時間帯によってどう違うか?」
- 「ある商品の在庫がどのように推移しているか?」
過去のデータと比較することで、傾向(けいこう)や変化を捉えることができます。「去年より増えた」「先月より減った」といった事実をデータから読み取ることができます。
2. 他のものとの比較(クロスセクション比較)
同じ時点での、異なる対象間での比較です。
- 例:
- 「複数の店舗の中で、どの店舗の売上が一番高いか?」
- 「異なる商品の売れ行きを比較する。」
- 「自社の顧客層と競合他社の顧客層を比較する。」
他の対象と比較することで、相対的な位置づけや違いを知ることができます。「A店舗はB店舗より〇〇%売上が高い」「この商品は他の商品より人気がある」といった発見に繋がります。
3. 目標値との比較
事前に定めた目標や基準と、実際のデータとを比較します。ビジネスでは「KPI(ケーピーアイ):重要業績評価指標」と呼ばれる目標値と比較することが多いです。
- 例:
- 「今月の売上目標に対して、現在の達成率は何%か?」
- 「顧客満足度目標に対して、現状はどうなっているか?」
目標値との比較は、目標達成度を測り、計画通りに進んでいるかを確認するために不可欠です。
データを比較する具体的なステップ(Excelを例に)
未経験者の皆さんにとって最も身近なツールの一つであるExcelを使って、簡単にデータを比較する方法を考えてみましょう。
ステップ1:比較したいデータを準備する
比較したいデータをExcelのシートに整理して入力します。比較対象となるデータは、同じ形式で並んでいると分かりやすいです。
例えば、月ごとの売上を前年と比較したい場合、以下のように整理できます。
| 月 | 今年の売上 | 去年の売上 | | :--- | :--------- | :--------- | | 4月 | 500,000 | 450,000 | | 5月 | 550,000 | 520,000 | | 6月 | 600,000 | 580,000 |
店舗ごとの売上を比較したい場合は、以下のように整理できます。
| 店舗 | 売上 | | :--- | :-------- | | A店 | 1,200,000 | | B店 | 950,000 | | C店 | 1,500,000 |
ステップ2:比較方法を決める(差を見るか、比率を見るか)
単に数値を並べるだけでなく、「差」や「比率」を計算することで、より深く比較できます。
- 差を見る: 「今年の売上 - 去年の売上」でどれだけ増減したか分かります。
- 比率を見る: 「(今年の売上 ÷ 去年の売上) × 100%」や「(今年の売上 - 去年の売上) ÷ 去年の売上 × 100% (伸び率)」で、何倍になったか、何%増減したかが分かります。
Excelでは、隣のセルに簡単な数式を入力するだけでこれらの計算ができます。
例えば、前年からの差額と伸び率を計算してみましょう。
| 月 | 今年の売上 | 去年の売上 | 差額 (今年の売上 - 去年の売上) | 伸び率 ((今年の売上 - 去年の売上) ÷ 去年の売上) |
| :--- | :--------- | :--------- | :------------------------------- | :---------------------------------------------- |
| 4月 | 500,000 | 450,000 | =B2-C2
(50,000) | =(B2-C2)/C2
(約0.111) |
| 5月 | 550,000 | 520,000 | =B3-C3
(30,000) | =(B3-C3)/C3
(約0.058) |
| 6月 | 600,000 | 580,000 | =B4-C4
(20,000) | =(B4-C4)/C4
(約0.034) |
※ Excel上ではパーセント表示に設定すると「11.1%」のように表示されます。
ステップ3:結果を読み解く
計算した差額や伸び率を見て、どのような傾向があるか、どこに違いがあるかを読み解きます。
- 「4月は前年より売上が5万円増え、伸び率は11.1%だった。これは良かった。」
- 「6月も増えてはいるが、伸び率は3.4%と鈍化している。何か原因があるかもしれない。」
- 「店舗間の比較では、C店が最も売上が高く、A店、B店の順だった。B店はA店より約2割売上が低い。B店に何か課題があるかもしれない。」
このように、単に数値を見るだけでなく、比較の結果から「何が起きているのか」を考え、次のアクションに繋げるのがデータ分析です。
データ比較をする上での注意点
データを比較する際には、いくつか注意しておきたい点があります。
- 同じ基準で比べる: 例えば、期間が違うデータや、集計方法が違うデータを単純に比較すると、間違った結論を導いてしまう可能性があります。同じ条件で集められたデータ同士を比較することが大切です。
- 比較の目的を意識する: なぜそのデータを比較するのか、何を知りたいのかを明確にしてから分析に取り組みましょう。「売上を前年と比較して、施策の効果を評価したい」「店舗ごとの売上を比較して、成功事例を共有したい」など、目的に応じて比較方法や見るべきポイントが変わってきます。
まとめ
データ分析の基本である「比較」は、決して難しくありません。過去と比べる、他と比べる、目標と比べる。これらのシンプルな比較を行うことで、現状を正確に理解し、次に何をすべきかが見えてきます。
まずは、皆さんの身近にあるデータ(例えば、部署の売上データ、ウェブサイトの簡単なアクセスデータなど)を使って、今回ご紹介したような簡単な比較から始めてみてください。Excelがあればすぐに実践できます。
データ比較は、データ分析の第一歩であり、様々な分析手法の基礎となります。このステップを通じて、データから新しい発見をする楽しさをぜひ体験してください。
次の記事では、比較した結果をより分かりやすく伝える「グラフ」の活用方法について解説する予定です。お楽しみに。