何を知りたい?データ分析の目的を明確にする最初のステップ
はじめに:データ分析、まず何から始める?
データ分析を始めようと思ったとき、「どこから手をつければいいのだろう?」「Excelを開いてみたけれど、何をしたらいいのか分からない」と感じる方は多いのではないでしょうか。データ分析ツールや技術的なスキルを学ぶことも大切ですが、実はその前に最も重要なステップがあります。それが、「データ分析の目的を明確にする」ことです。
目的がはっきりしないままデータ分析を進めても、時間や労力が無駄になってしまう可能性があります。例えば、「とりあえず売上データを見てみよう」と始めても、具体的に何を知りたいのかが決まっていないと、どんなデータが必要か、どのように分析すれば良いかが分からず、結局何も得られない、ということになりかねません。
この章では、データ分析の最初の、そして最も大切なステップである「目的設定」について、未経験の方にも分かりやすく解説します。
なぜ目的設定が大切なのか?
データ分析における目的設定は、料理でいうところの「何を作るか決める」ことによく似ています。何を作るか決まれば、必要な材料(データ)や調理器具(ツール)、手順(分析手法)がおのずと決まります。
目的を明確にすることには、以下のようなメリットがあります。
- 必要なデータが分かる: 目的達成のために、どのようなデータが必要なのかが明確になります。
- 適切な分析方法を選べる: 目的を達成するための最も効果的な分析手法が見えてきます。
- 効率的に進められる: 無関係なデータの収集や分析を避け、ゴールに向かって最短距離で進めます。
- 意味のある結果が得られる: 目的と関連性の高い、ビジネスに役立つ洞察や示唆を得られます。
- 結果を伝えやすくなる: 分析結果が何のために行われたのか、何を意味するのかを説明しやすくなります。
目的が不明確だと、やみくもにデータを集めたり、分析ツールを触ってみたりするだけで終わってしまい、具体的な行動につながる結果は得られにくいのです。
データ分析の目的を明確にするステップ
では、具体的にどのように目的を設定すれば良いのでしょうか。いくつかステップを踏んで考えてみましょう。
ステップ1: 何を知りたいのか?疑問を具体的にする
まずは、あなたがデータ分析を通して「何を知りたいのか?」という疑問を具体的にすることから始めます。これは、あなたのビジネス課題や興味に基づいたものであるべきです。
例えば、「最近、売上が落ちている気がする」という漠然とした感覚がある場合、それをデータ分析で明らかにしたいとします。このとき、「売上が落ちている原因は何だろう?」という疑問をさらに具体的に掘り下げていきます。
- 「どの商品の売上が落ちているのか?」
- 「特定の顧客層からの売上が減っているのか?」
- 「曜日や時間帯によって売上の傾向は変わったのか?」
- 「特定のキャンペーンの効果はどうだったのか?」
このように、「なぜ?」や「どのように?」を繰り返しながら、具体的な疑問をリストアップしてみましょう。できるだけ具体的にすることで、次に必要なステップが見えやすくなります。
ステップ2: 誰のために、何に使う結果か?聞き手を意識する
データ分析の結果を「誰に伝えるのか」「その人はその結果をどう活用するのか」を考えることも重要です。報告相手(上司、他部署の担当者、顧客など)によって、知りたい情報や報告の方法は変わってきます。
例えば、あなたが営業担当で、売上データから営業戦略を立て直したいと考えているとします。この分析結果はあなた自身の行動計画に役立てるだけでなく、チーム内で共有して他のメンバーの参考にするかもしれません。あるいは、上司に報告して部署全体の方針決定に役立てるかもしれません。
聞き手が明確になれば、分析の焦点を絞りやすくなり、報告形式(グラフが良いか、数値の羅列が良いかなど)もイメージしやすくなります。分析結果がビジネス上の具体的なアクションにつながるように、聞き手の視点を取り入れましょう。
ステップ3: ゴールを具体的に定義する
疑問を具体的にし、聞き手を意識したら、データ分析によって達成したい「ゴール」を定義します。このゴールは、ステップ1で立てた疑問に答えた結果、どのような状態を目指すのかを明確にしたものです。
ゴールは、できるだけ具体的で、可能であれば測定可能(数値化できる)なものにしましょう。
例えば、
- 漠然としたゴール: 「売上を上げたい」
- 具体的なゴール: 「来月、A支店の特定の主力商品の売上を、前月比で5%向上させるための具体的な施策候補を見つける」
のように、誰が見ても達成したかどうかが判断できるように定義します。ゴールが明確になれば、必要な分析のレベルや範囲も定まってきます。
ステップ4: どんなデータが必要かを考える
最後に、ステップ1〜3で定めた目的(知りたいこと、ゴール)を達成するために、どのようなデータが必要かを考えます。
- 売上データ
- 顧客属性データ
- 商品データ
- キャンペーン実施状況データ
- Webサイトのアクセスデータ
- 顧客からの問い合わせデータ
など、目的を達成するために必要なデータは何かをリストアップします。そして、それらのデータが現在手元にあるのか、それとも新しく収集する必要があるのかを確認します。
もし必要なデータが手元にない場合や、データだけでは目的達成が難しいと判断した場合は、目的を少し修正したり、他の情報源(アンケートやヒアリングなど)を組み合わせることを検討したりします。
目的設定のよくある落とし穴と注意点
未経験者が目的設定でつまずきやすいポイントをいくつかご紹介します。
- 目的が漠然としすぎている: 「なんとなくデータを見てみたい」「データから何か面白い発見が欲しい」といった漠然とした目的では、効果的な分析は難しいです。ステップ1のように、具体的な疑問に落とし込む練習をしましょう。
- データありきで考えてしまう: 手元にあるデータを見てから目的を決めようとする場合があります。もちろん、データを見て新たな疑問が生まれることもありますが、まずは解決したい課題や知りたいことを先に考えた方が、効率的に分析を進められます。
- 分析すること自体が目的になる: データ分析ツールを使えるようになったり、複雑なグラフを作れたりすることが目的になってしまうことがあります。データ分析はあくまでビジネス上の課題解決や意思決定のための「手段」であることを忘れないようにしましょう。
まとめ:まずは小さな目的から始めてみましょう
データ分析の最初のステップは、技術的なスキルを学ぶことではなく、「何を知りたいのか」「何のために分析するのか」という目的を明確にすることです。
- 知りたい疑問を具体的にする
- 結果を誰に伝え、どう活用してもらうか考える
- 達成したいゴールを具体的に定義する
- 目的達成のために必要なデータを考える
この4つのステップで、まずは小さな目的から設定してみましょう。例えば、「先月の自分の担当顧客で、購入頻度が高い層と低い層に何か違いはあるのか?」といった、身近な疑問から始めるのがおすすめです。
目的が定まれば、次にどのようなデータを集めれば良いのか、どのような分析方法が適切なのかが見えてきます。この「目的設定」が、データ分析成功への大切な第一歩となります。