データ分析の第一歩:分析しやすいデータに整える方法【入門】
はじめに:あなたのデータ、分析しやすい形になっていますか?
データ分析を始めてみたいけれど、「手元にあるデータがなんだか分析しにくそうだな」「Excelで集計しようとしても上手くいかないな」と感じたことはありませんか?
実は、データ分析をスムーズに進めるためには、分析しやすいようにデータを「整える」ことがとても重要です。これを「データ整形」や「データ前処理」の一部と呼びます。
この「整える」作業ができていないと、どんなに素晴らしい分析ツールを使っても、思ったような結果が得られないことがあります。
この記事では、データ分析をはじめて行う方に向けて、「分析しやすいデータはどんな形をしているのか」「なぜ整える必要があるのか」、そして「具体的にどうすればデータを整えられるのか」を、身近なExcel操作を例に分かりやすく解説します。
分析しやすいデータとはどんな形?「縦長のデータ」をイメージする
データ分析の多くのツールや手法では、データが特定の「きれいな形」で整理されていると扱いやすくなります。最も基本的な形は、「縦長のデータ」と呼ばれる形式です。
具体的には、以下のような特徴を持つデータ形式を指します。
- 行: 一つ一つの「出来事」や「対象」を表します。例えば、お店の売上データであれば1回の「購入」が1行になります。顧客データであれば1人の「顧客」が1行になります。
- 列: それぞれの行が持つ「情報」や「特徴」を表します。売上データなら「購入日」「顧客ID」「商品名」「売上金額」などがそれぞれの列になります。顧客データなら「顧客ID」「氏名」「住所」「年齢」などがそれぞれの列になります。
- 1つのセルには1つの情報: 1つのセルの中には、複数の異なる情報(例:「東京都中央区山田太郎」のように住所と氏名が一緒に入っている)ではなく、単一の情報(例:「東京都」「中央区」「山田太郎」のようにセルが分かれている)が入っている状態が望ましいです。
このような形になっていると、後で「特定の日付のデータだけを絞り込む(フィルター)」、「商品ごとの合計売上を計算する(集計)」、「顧客の年齢層別にグループ分けする」といった分析や集計がとても簡単になります。
逆に、以下のようなデータは分析しにくいことが多いです。
- 複数の情報が1つのセルに入っている
- 項目名が統一されていない(例:「購入日」と「日付」が混在)
- 表の中に合計行や小計行が入っている
- 複数の項目が横方向に展開されていて、縦に情報が並んでいない(例:月ごとの売上が横一列に並んでいる表)
なぜデータを整える必要があるのか?
データを分析しやすい形に整えることには、いくつかの理由があります。
- 分析ツールの活用効率が上がる: Excelのピボットテーブル機能や、より専門的なBIツール(Tableauなど)やプログラミング言語(Pythonなど)は、「縦長のデータ」形式を前提としていることが多いです。データが整っていれば、これらのツールを最大限に活用できます。
- 集計や計算がしやすくなる: 「商品名」の列が統一されていれば、その列を使って簡単に商品ごとの合計売上を集計できます。もし同じ商品でも表記が異なっていたら、正確な合計は出せません。データを整えることで、正確かつ簡単に集計や計算ができるようになります。
- 間違い(エラー)を防ぎやすくなる: データがばらばらの形式だったり、不要な情報が混ざっていたりすると、手作業での修正が増え、入力ミスや計算ミスなどのエラーが起こりやすくなります。データを整然と保つことで、ミスのリスクを減らすことができます。
具体的にどう整える?Excelでの基本操作例
では、実際にExcelを使ってデータを分析しやすい形に整えるための基本的な操作を見てみましょう。ここでは、「分析しやすいデータとはどんな形?」で説明した「縦長のデータ」形式を目指すための操作例をいくつかご紹介します。
例1:一つのセルに複数の情報が入っている場合
例えば、「氏名(フルネーム)」と「フリガナ」が同じセルに入っているようなケースです。
- 操作例:区切り位置指定ウィザードを使う
- 分割したいデータが入っている列を選択します。
- Excelの「データ」タブにある「データツール」グループから「区切り位置」を選択します。
- ウィザードが表示されるので、「カンマやタブなどの区切り文字によってフィールドごとに区切られたデータ」を選び、「次へ」をクリックします。
- 区切り文字として「スペース」や「カンマ」など、セル内の情報が区切られている文字を指定します。プレビューを確認しながら調整し、「完了」をクリックします。
- これで、一つのセルに入っていた情報が複数の列に分割されます。
例2:不要な行や列がある場合
データの先頭にファイル名や作成者の情報があったり、途中に合計行や小計行が入っていたり、分析に使わない列がある場合です。
- 操作例:行や列の削除
- 不要な行や列の見出し(行番号や列番号)をクリックして選択します。複数選択する場合はCtrlキー(Macの場合はCmdキー)を押しながらクリックします。
- 右クリックして「削除」を選択します。
例3:項目名が統一されていない場合
同じ意味なのに「日付」「購入日」「販売年月日」のように列名がバラバラな場合です。
- 操作例:列名の修正
- それぞれの列名を、分析で使う統一された名前に手作業で修正します。後々のことを考えて、分かりやすく、かつ長すぎない名前にするのがおすすめです。
例4:データを特定の項目で並べ替えたい場合
日付順や売上金額順にデータを並べ替えたい場合です。
- 操作例:並べ替え機能を使う
- データを並べ替えたい範囲(表全体や、並べ替えたい列を含む範囲)を選択します。
- 「データ」タブの「並べ替えとフィルター」グループから「並べ替え」を選択します。
- 「最優先されるキー」で並べ替えたい列を選び、「順序」(昇順か降順)を指定します。必要に応じて「レベルの追加」で複数の条件で並べ替えができます。
- 「OK」をクリックします。
例5:特定の条件を満たすデータだけを見たい場合
「東京都」の顧客だけを見たい、「売上金額が1万円以上」の取引だけを見たい場合です。
- 操作例:フィルター機能を使う
- データの見出し行を含む範囲を選択します。
- 「データ」タブの「並べ替えとフィルター」グループから「フィルター」を選択します。
- 見出し行のセルに▼マークが表示されます。
- 絞り込みたい列の▼マークをクリックし、表示されるリストから条件を選択したり、値を入力したりして「OK」をクリックします。
- これで、条件に合う行だけが表示されます。
これらの操作は、どれもExcelの基本的な機能ですが、データを「縦長のデータ」形式に近づけ、分析しやすい状態にするために非常に役立ちます。
まとめ:データ整形は分析の質を高める重要なステップ
データ分析と聞くと、複雑な統計分析やAIなどを想像するかもしれませんが、その前に「分析しやすいようにデータを整える」という下準備が、実は分析の成功を左右する鍵となります。
今回ご紹介したExcelでの操作例はほんの一部ですが、ご自身のデータがどのような形になっているかを確認し、「どうすればもっと分析しやすくなるだろう?」と考えてみることが、データ分析スキル習得の第一歩です。
最初は手間がかかるように感じるかもしれませんが、一度きれいな形に整えてしまえば、その後の集計や分析が格段に効率的かつ正確に行えるようになります。
まずは身近なデータを使って、データを整える練習から始めてみてください。データがきれいになるにつれて、「このデータからこんなことも分かるかもしれない!」と、分析への意欲がさらに高まるはずです。
次に何を学ぶべきか悩んだら、分析の目的を明確にする方法や、データの種類について解説した記事も参考にしてみてください。