あなたのデータ分析、見る期間は合ってる?適切な期間設定の方法【入門】
あなたのデータ分析、見る期間は合ってる?適切な期間設定の方法【入門】
データ分析を始める際に、「どのデータを使おう?」と考えるかと思います。そのとき、「いつのデータを見るか」、つまり分析対象とする期間をどう設定するかは、実はとても重要です。
「とりあえず、手元にある過去5年分のデータを全部使ってみよう」 「最新データだけ見れば十分じゃない?」
このように、期間設定に迷ったり、深く考えずに決めてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、この期間設定が適切でないと、せっかくデータ分析をしても、間違った結論を導いてしまったり、ビジネスに役立つ知見を見逃してしまったりする可能性があるのです。
この記事では、データ分析における「期間設定」がなぜ重要なのか、そして分析の目的に合わせてどのように適切な期間を選べば良いのかについて、未経験の方にも分かりやすく解説します。
なぜ期間設定が重要なのか?データ分析の結果が変わる理由
データは時間と共に変化します。最新の状況を知りたいのか、過去からの変化のパターンを知りたいのかによって、見るべき期間は異なります。
例えば、以下の2つのケースを考えてみましょう。
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ケース1:直近のキャンペーンの効果を知りたい
- あなたが最近実施した新しいキャンペーンが、売上にどれだけ貢献したかを知りたいとします。この場合、キャンペーン実施中のデータと、その直前の同じくらいの期間のデータを比較するのが適切でしょう。過去5年分のデータを見ても、他の要因(季節、経済状況など)が混ざりすぎて、キャンペーン単体の効果を正確に判断するのは難しくなります。
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ケース2:季節による売上の傾向を知りたい
- あなたの会社の製品が、特定の季節に売上が伸びる傾向があるかを知りたいとします。この場合、少なくとも1年分のデータが必要です。さらに、数年分のデータを比較することで、単なる一時的な変動なのか、毎年見られる季節的なパターンなのかをより正確に判断できます。過去1ヶ月や直近半年だけのデータでは、季節性は捉えられません。
このように、分析の目的によって、適切な期間は全く異なります。不適切な期間で分析を行うと、以下のようなことが起こり得ます。
- 誤った結論を導く: 最新の傾向を見たいのに古いデータを見ると、現状とは違う結果になる可能性があります。
- 重要なパターンを見逃す: 季節性や長期的なトレンドを見たいのに短い期間のデータしか見ないと、そのパターンに気づけません。
- 不要なノイズに惑わされる: 分析目的に関係ない古いデータや、一時的な特殊要因を含むデータを含めると、分析が複雑になり、本質が見えにくくなります。
データ分析における期間設定は、言わば「どの期間にフォーカスしてレンズを合わせるか」ということです。適切な期間に焦点を当てることで、よりクリアで目的に沿った分析結果を得ることができます。
適切な期間を設定するための基本的な考え方
では、具体的にどのように期間を設定すれば良いのでしょうか?以下の3つのステップで考えてみましょう。
1. 分析の目的と仮説を明確にする
これが最も重要です。「何を知りたいのか?」「どのような疑問に答えたいのか?」という分析の目的を明確にすることが、期間設定の出発点です。
例えば、「過去1年間の売上推移を見て、前年同月比でどれだけ成長しているか知りたい」という目的であれば、「過去2年間」のデータ(比較対象の1年間+知りたい1年間)が必要です。
「新しい広告施策が顧客の行動に影響を与えたか知りたい」という目的であれば、施策実施期間と、その直前の期間のデータを見るのが自然です。
2. データの特性や「見たいもの」に必要な期間を考える
分析したいデータが持つ特性や、見つけたいパターンに必要な期間を考えます。
- トレンド(傾向)を見たい: 売上が年々伸びているか、のような長期的な傾向を見たい場合は、数年分のデータが必要です。
- 季節性を見たい: 特定の時期に売上が増減するパターンを見たい場合は、少なくとも1年分のデータが必要です。より確実に見るには数年分のデータがあると良いでしょう。
- 特定のイベント(キャンペーン、システム変更など)の影響を見たい: イベント発生期間とその前後の期間のデータが必要です。イベント発生直後の短期的な影響か、長期的な影響かも考慮します。
- 最新の状況を見たい: 最近の動向や変化の兆しを捉えたい場合は、直近のデータに絞るのが有効です。
データの種類(売上、アクセス数、アンケート回答など)によっても、データがどのくらいの頻度で、どのようなパターンを持っているかが異なります。そのデータの「当たり前」の変動を理解することも、期間設定の助けになります。
3. 利用可能なデータの量と質を考慮する
分析したい目的やデータ特性から必要な期間が分かっても、実際に利用できるデータがその期間分ない、またはデータの質が低い(欠損が多い、形式がバラバラなど)ということもあります。
利用できるデータが限られている場合は、その範囲内で最も目的に合致する期間を設定するしかありません。また、データの質に問題がある場合は、分析に入る前にデータの整備(前処理)が必要になります。
【補足】データ量が多ければ良いわけではない
「データは多ければ多いほど良い」と考えがちですが、期間設定においては必ずしもそうではありません。分析目的に合わない古いデータを含めすぎると、ノイズが増えたり、計算に時間がかかったりするだけでなく、前述のように誤った結論を導くリスクが高まります。
期間設定を間違えると起こりうる例
例えば、ある商品の月ごとの売上データがあったとします。
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例1:季節性を無視して直近2ヶ月だけ見る
- 目的:「最近売上が落ちている原因を知りたい」
- 期間:「直近2ヶ月」
- 結果:もしその時期が毎年売上が落ちる「閑散期」だったとしても、そのことに気づかず、「何かの問題が起きた!」と誤った原因を探し始めてしまうかもしれません。
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例2:長期トレンドを見たいのに、一時的な特需があった期間を含める
- 目的:「過去5年間の売上トレンドを見たい」
- 期間:「過去5年間」
- 結果:もしその5年間の中に、例えばコロナ禍での巣ごもり需要による特需で一時的に売上が急増した期間が含まれていると、その特需を除いた本来のトレンドが見えにくくなり、「こんなに急成長していたのか!」と過大評価してしまう可能性があります。
このように、期間設定のミスは、分析結果の解釈を誤らせ、ビジネス上の意思決定に悪影響を与えることがあります。
まとめ:期間設定は分析の土台
データ分析における「期間設定」は、単にいつからいつまでのデータを使うかを決めるだけの作業ではありません。分析の目的を達成し、データの持つ意味を正しく理解するための、非常に重要な「土台」となる作業です。
まずは「何を知りたいのか?」を明確にし、そのために「いつのデータを見るのが最も適切か?」を考える習慣をつけましょう。データの特性や利用可能なデータの範囲も考慮しながら、最適な期間を設定することで、データ分析はより有益で、信頼性の高いものになります。
次にデータ分析を行う際は、どんな期間のデータを使うべきか、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。