データ分析で見るべき『数字』って何?ビジネスを測る指標(KPI)の基本【入門】
はじめに:たくさんのデータ、何を見ればいいの?
データ分析を始めてみようと思っても、「たくさんの数字がある中で、いったい何を見れば良いのだろう?」と迷ってしまうことはありませんか?売上データ一つとっても、合計額、一人あたりの平均購入額、新規顧客の割合など、色々な数字があります。
データ分析は、ただ数字を眺めるだけでは意味がありません。ビジネスの目的や課題を解決するために、「何が重要なのか」を見極める必要があります。そこで大切になるのが、「指標(しひょう)」という考え方です。
この記事では、データ分析で「見るべき数字」を見つけるための、指標(特にビジネスでよく使われるKPI)の基本的な考え方を分かりやすくお話しします。
データ分析における「指標」とは?
「指標」とは、ビジネス活動や目標の達成度合いを測るための、具体的な数値のことです。例えるなら、健康診断で体の状態を測る「体重」や「血圧」のようなものです。これらの数値を見ることで、自分の健康状態が良いか悪いか、改善が必要かどうかが分かります。
ビジネスにおける指標も同じです。例えば、「月間売上高」は、売上という活動の成果を示す指標ですし、「顧客満足度」は、顧客サービスがうまくいっているかを示す指標となり得ます。
なぜ指標が必要なのでしょうか?それは、ビジネスの状況を客観的かつ定量的に(数字で)把握するためです。感覚や推測だけでなく、具体的な数字に基づいて現状を理解し、問題点を見つけ、改善策の効果を判断できるようになります。
KPI(ケイピーアイ)ってよく聞くけど何?
データ分析やビジネスの現場で「KPI」という言葉をよく聞くかもしれませんね。KPIは「Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インディケーター)」の略で、「重要業績評価指標」と訳されます。
KPIは、「目標達成のために特に重要な指標」のことです。たくさんの指標がある中で、「これを見れば、目標に近づいているかどうかが分かる」という、鍵となる指標をKPIとして設定します。
例えば、「今期の目標は売上を10%アップさせること」だとします。この目標達成のために、以下のような指標が考えられます。
- 全体の売上高
- 一人あたりの平均購入額
- 新規顧客数
- 既存顧客のリピート率
- Webサイトの訪問者数
- 商品ごとの売上
これらの指標はどれも重要ですが、特に「新規顧客数を20%増やすことが、売上10%アップの鍵だ」と考えたとします。この場合、「新規顧客数」をKPIとして設定し、この数字を特に注視してデータ分析を行うことになります。
KPIを設定することで、漠然とした目標ではなく、具体的な行動と評価につながる重要な数字に焦点を当てられるようになります。
良い指標(KPI)を選ぶためのヒント
ビジネスの目的や状況によって、設定すべき指標やKPIは変わります。では、どのようにして良い指標を選べば良いのでしょうか。未経験の方がまず考えるべきシンプルなポイントをいくつかご紹介します。
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ビジネスの目的とズレていないか?
- 最も重要なのは、設定しようとしている指標が、あなたのビジネスの目的(例: 売上増加、コスト削減、顧客満足度向上など)と直接関連しているかです。目的達成に貢献しない数字を追っても意味がありません。
- 例: 顧客満足度を上げたいのに、社内会議の時間を指標にしても意味がありません。顧客アンケートの結果や問い合わせ対応スピードなどが関連性の高い指標になります。
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正確に測定できるか?
- その数字は、手間なく、正確に集計できるデータとして存在するでしょうか?あるいは、新しくデータを収集する仕組みを作る必要がありますか?
- 例: Webサイトの訪問者数はツールを使えば正確に測れますが、「顧客の幸福度」のような指標を数値化して測るのは難しい場合があります。
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誰が見ても同じ意味で理解できるか?
- あいまいな定義の指標は、人によって解釈が異なり、共通認識を持つのが難しくなります。「良い」とか「悪い」といった主観的なものではなく、具体的な数値で定義できる指標を選びましょう。
- 例: 「営業活動を頑張る」ではなく、「月に新規顧客に10件電話する」のように具体的に定義できる指標が良いです。
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分析の結果、行動につなげられるか?
- その指標の数字が分かったとして、その結果を受けて具体的な改善策や次の行動を考えられるでしょうか?
- 例: 「Webサイトの離脱率(サイトを見た人がすぐに他のサイトに移ってしまう割合)が高い」という指標が分かれば、「サイトのデザインを改善しよう」「内容をもっと分かりやすくしよう」といった行動につながります。
最初は完璧な指標を見つけるのは難しいかもしれません。まずは、あなたの仕事や担当しているビジネス活動の「目的」を考え、「その目的が達成できているかを知るために、一番役立つ数字は何だろう?」と考えてみてください。いくつか候補を挙げて、上記のヒントを参考に絞り込んでいくのがおすすめです。
指標(KPI)を設定したら:データ分析のステップへ
良い指標(KPI)を設定できたら、いよいよデータ分析の出番です。設定した指標の数字を定期的に(日ごと、週ごと、月ごとなど)集計し、変化や傾向を見ていきます。
例えば、「月間売上高」をKPIにした場合、過去数ヶ月、あるいは過去数年の売上高をExcelなどのツールに入力し、グラフにしてみると、売上が上がっているのか、下がっているのか、季節による変動はあるのかなどが一目で分かります(これは「データの可視化」という基本的な分析手法です)。
もし売上が下がっていることが分かったら、次に「なぜ下がっているのだろう?」という疑問を持ち、他の関連データ(例: 広告費、競合の動き、景気、特定の商品の売れ行きなど)を分析して、原因を探っていきます。これが「データ分析の基本のステップ」です。
指標(KPI)は、データ分析のスタート地点であり、目指すべきゴールを見失わないための羅針盤のようなものです。
まとめ:データ分析は「何を見るか」から始まる
データ分析は、単に複雑なツールを使うことではありません。まずは、「ビジネスの目的のために、どんな数字が重要なのか(=指標、KPI)」を理解し、設定することから始まります。
今日お話ししたポイントを参考に、あなたの身の回りにあるデータの中で、ビジネスの成果を測るために役立ちそうな指標を考えてみてください。それが、データ分析を学び、実践する上での大きな一歩となるはずです。
次に何を分析すれば良いか、どうやってデータを集めて整理すれば良いかについては、当サイトの他の記事もぜひ参考にしてください。一緒にデータ分析の基礎を学んでいきましょう。