データ分析でデータの「傾向」を掴む基本:変化や流れを読む方法【入門】
はじめに:なぜデータの「傾向」を見るのが重要なのか?
データ分析と聞くと、難しそうな計算や専門的なグラフを想像するかもしれません。しかし、データ分析の基本的な目的の一つは、データに隠された「意味」を見つけ出すことです。その「意味」の中でも、ビジネスにおいて非常に重要になるのが、データの「傾向(トレンド)」を掴むことです。
ビジネスの現場で扱うデータ、例えば売上データや顧客数データ、Webサイトのアクセスデータなどは、常に変化しています。今日の売上と昨日の売上、今月の顧客数と先月の顧客数は違いますよね。
この「変化」や「流れ」の中に、ビジネスを改善するためのヒントが隠されています。「売上が少しずつ増えているな」「特定の時期に顧客が増える傾向があるな」といったデータの傾向を把握することで、将来の予測を立てたり、次に何をすべきかを判断したりできるようになります。
データ分析の経験がない方も、まずはこの「データの傾向を見る」という考え方から始めてみませんか? 専門的な知識は不要です。今回は、データの傾向を掴むための基本的な考え方と、身近なツールでできる簡単な方法をご紹介します。
データ分析でいう「傾向」とは?
データ分析における「傾向」とは、データが時間とともにどのように変化していくか、あるいは特定の条件に対してどのように変化するか、という「方向性」や「パターン」のことです。
例えば、
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時間による変化:
- 「月々の売上が右肩上がりに増えている」
- 「ある商品の売上が夏になると大きく伸びる」
- 「顧客数が徐々に減ってきている」
- 「Webサイトのアクセスが特定の曜日に集中する」
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条件による変化:
- 「広告費を増やした月から問い合わせが増加傾向にある」
- 「特定のキャンペーンを実施した期間だけ売上が急増した」
このように、データが一定の方向に進んでいたり、周期的な変動があったり、特定の出来事と連動して動いたりする様子が「傾向」です。
この傾向を知ることは、ビジネスの現状を正しく理解し、将来を予測したり、課題を発見したりするための第一歩となります。
「傾向」を掴むための基本的な方法
データの傾向を掴むために、いきなり高度な分析手法を使う必要はありません。未経験者の方でも、まずは「データを視覚的に見てみる」ことから始めるのが最も簡単で効果的です。
グラフでデータの「変化」や「流れ」を見てみよう
データをグラフにすることで、数字の羅列では気づきにくい「傾向」が驚くほど見えやすくなります。特に、時間の経過に伴う変化を見るのに適しているのが「折れ線グラフ」です。
折れ線グラフを使ってみよう
月ごとの売上データがあるとします。このデータをExcelなどで折れ線グラフにしてみましょう。
例えば、以下のようなデータがあるとします。
| 月 | 売上(万円) | | :----- | :--------- | | 2023/1 | 10 | | 2023/2 | 12 | | 2023/3 | 15 | | 2023/4 | 14 | | 2023/5 | 18 | | 2023/6 | 20 |
このデータをExcelで選択し、「挿入」タブから「折れ線グラフ」を選ぶだけで、グラフが表示されます。
グラフを見ると、線が右に向かって上がっていれば「売上が増加傾向にある」、下がっていれば「減少傾向にある」といった大まかなトレンドがすぐに分かります。また、線が波打っていれば「周期的な変動がある」と推測できます。
複数の商品の売上推移を一本のグラフに重ねて表示すれば、「A商品は伸びているが、B商品は横ばいだ」といった比較も視覚的に簡単に行えます。
棒グラフで「比較」から傾向を見ることも
折れ線グラフは時間による変化を見るのに適していますが、月ごとの売上合計や、商品ごとの販売数を比較して傾向を掴む場合は、棒グラフも有効です。
例えば、四半期ごとの売上を棒グラフにすれば、前の四半期と比べて伸びているか、あるいは他の四半期と比べてどうか、といった比較を通じて傾向を捉えることができます。
重要なのは、「どんなグラフを使えば、見たい傾向が一番分かりやすく表現できるか」を考えることです。まずは折れ線グラフや棒グラフといった基本的なグラフから試してみるのが良いでしょう。
傾向分析から何がわかるのか?(解釈のヒント)
グラフなどを使ってデータの傾向を掴んだら、次にその傾向から何を読み取れるかを考えてみましょう。
- 成長・衰退の度合い: 売上や顧客数がどれくらいのペースで増減しているか? 急成長しているのか、緩やかに伸びているのか、あるいは停滞・減少しているのか。
- 季節性・周期性: 特定の月や曜日にデータが変動するパターンがあるか?(例: クリスマス商戦で売上が伸びる、週末にアクセスが増えるなど)。
- イベントとの関連: 何か特別な出来事(新商品発売、キャンペーン、競合店のオープンなど)があった前後にデータの動きが変わっているか?
- 異常値の発見: いつもの傾向から大きく外れたデータはないか?(例: システムトラブルで一時的にアクセスがゼロになった、入力ミスで異常に大きな売上データが入ったなど)。
これらの視点からデータを見ることで、「なぜこのような傾向になっているのだろう?」と考えるきっかけが生まれます。この「なぜ?」を追求することが、データ分析を次のステップに進めるための鍵となります。
まとめ:傾向分析はデータ活用の第一歩
今回は、データ分析の基礎として「データの傾向を掴む」ことの重要性と、そのための基本的な方法をご紹介しました。
難解な統計学やプログラミングを知らなくても、Excelなどの身近なツールを使ってデータをグラフ化するだけで、データの変化や流れ、つまり「傾向」を視覚的に捉えることができます。
この傾向を理解することは、現状を把握し、将来を予測し、ビジネス上の意思決定を行うための重要なステップです。
まずは、ご自身の業務で扱うデータ(売上リスト、顧客リスト、アクセスログなど)を準備し、時系列に並べて折れ線グラフにしてみるところから始めてみてください。きっと、数字だけでは気づかなかった発見があるはずです。
データの傾向を知ることは、データ分析の楽しさを発見し、さらに深い分析に進むための最初の、そして最も重要な一歩と言えるでしょう。