データ分析結果を分かりやすく伝えるグラフの選び方【入門】
データ分析は、集めたデータを調べて、そこから意味や傾向を見つけ出す活動です。頑張ってデータを分析しても、その結果が他の人に伝わらなければ、せっかくの分析も活かされません。ここで重要になるのが、「どうやって分析結果を分かりやすく見せるか」です。そのための強力な手段が「グラフ」です。
この章では、データ分析の初心者向けに、分析結果を効果的に伝えるためのグラフの基本的な選び方をご紹介します。
なぜグラフで伝えることが大切なの?
データ分析の結果は、数字の羅列だけでは全体像を掴むのが難しく、特にデータ分析に詳しくない人にとっては理解しにくいものです。
グラフを使うことで、たくさんの数字の中に隠された「傾向」や「比較」、「変化」などが一目で分かります。例えば、「売上が先月より10%増えた」という事実だけでなく、「どの商品の売上が特に伸びたか」「特定の期間に急に売上が増えた理由は何だろうか」といった疑問を持つきっかけにもなり、次の行動につながりやすくなります。
どんなグラフがあるの?基本的なグラフの種類を知ろう
世の中には様々な種類のグラフがありますが、ビジネスの現場でよく使われ、データ分析の入門として知っておきたい基本的なグラフは限られています。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
棒グラフ(Bar Chart)
- どんなグラフ? 項目ごとにデータの数量を棒の長さで表現するグラフです。
- 何を見るときに便利?
- 項目ごとの数量を比較したいとき。(例: 商品Aと商品Bの売上比較、部署ごとの経費比較)
- いくつかの項目の大小関係を見たいとき。
- 未経験者の方へ: Excelなどで簡単に作成できます。項目(例: 商品名)と数量(例: 売上高)があれば作成可能です。
折れ線グラフ(Line Chart)
- どんなグラフ? 時間の経過など、連続的な変化を線で結んで表現するグラフです。
- 何を見るときに便利?
- 時間によるデータの変化(推移)を見たいとき。(例: 月ごとの売上推移、日ごとのアクセス数推移)
- 複数の項目が時間とともにどのように変化するかを比較したいとき。
- 未経験者の方へ: 横軸に時間や日付、縦軸に数量を設定して作成します。トレンドを掴むのに役立ちます。
円グラフ(Pie Chart)
- どんなグラフ? 全体を1つの円(100%)とし、それぞれの項目が全体に対してどのくらいの割合を占めているかを扇形の大きさで表現するグラフです。
- 何を見るときに便利?
- 全体に対する各項目の割合を見たいとき。(例: 総売上における商品カテゴリごとの割合、アンケート回答者の年齢層の割合)
- 未経験者の方へ: 全体を構成する各部分のデータに対して使用します。項目が多すぎると分かりにくくなるため、数項目に絞るのが一般的です。
散布図(Scatter Plot)
- どんなグラフ? 2つの異なる種類のデータ(数値データ)の関係性を、点の集まりで表現するグラフです。
- 何を見るときに便利?
- 2つのデータの間に関係性(相関関係)があるかを見たいとき。(例: 広告費と売上の関係、勉強時間とテストの点数の関係)
- 特定の傾向から外れたデータ(外れ値)を見つけたいとき。
- 未経験者の方へ: 横軸と縦軸にそれぞれ異なるデータを設定します。点が右上がりに集まっていれば「一方が増えると、もう一方も増える傾向がある」といった関係性が見えてきます。
何を伝えたい?目的に合わせたグラフ選びの基本ステップ
「このデータ、どのグラフを使えばいいんだろう?」と迷ったら、以下のステップで考えてみましょう。
- 「何を伝えたいか?」を明確にする:
- 単に数字を見せるだけでなく、「この期間で売上が伸びている」「この商品は他の商品よりよく売れている」「この2つには関連性がある」など、データから伝えたい「メッセージ」は何ですか?
- データの種類と性質を確認する:
- 比較したい項目がいくつかあるのか?
- 時間による変化を見たいのか?
- 全体の中でそれぞれの項目がどれくらいの割合を占めるのか?
- 2つの数値データの関係性を見たいのか?
- 目的に合ったグラフを選ぶ:
- 比較したい → 棒グラフが向いていることが多いです。
- 時間による変化を見たい → 折れ線グラフが適しています。
- 全体に対する割合を見たい → 円グラフが分かりやすいです。
- 2つの数値データの関係性を見たい → 散布図を検討します。
例えば、「新商品の月ごとの売上推移を見たい」という目的であれば、時間の変化を見たいので折れ線グラフが適しています。一方、「商品A、B、Cそれぞれの年間売上を比較したい」のであれば、項目ごとの比較なので棒グラフが良いでしょう。
分かりやすいグラフにするためのちょっとしたコツ
グラフの種類を選んだら、さらに分かりやすくするための工夫を加えましょう。
- タイトルをつける: グラフ全体が何を示しているのか、一目で分かるタイトルをつけます。(例: 「2023年度 月別売上高推移」)
- 軸のラベルをつける: 横軸、縦軸がそれぞれ何を示しているのか、単位(円、個、%など)も忘れずに入れましょう。
- 凡例(はんれい)を見やすくする: 複数のデータ系列がある場合は、どの線や棒が何を示しているのかを明確にします。
- シンプルに: 情報を詰め込みすぎたり、不要な装飾(立体、影など)を多用したりするとかえって分かりにくくなります。伝えたいメッセージが伝わるように、シンプルに整理しましょう。
これらの工夫は、Excelなどの表計算ソフトでも簡単に行うことができます。
まとめ:適切なグラフで分析結果を「伝える」力を高めよう
データ分析の初心者にとって、様々な分析手法を学ぶことも大切ですが、分析した結果を他の人に「伝える」スキルも非常に重要です。適切なグラフを選ぶことで、あなたの発見や洞察がより多くの人に理解され、ビジネスの意思決定に役立てられる可能性が高まります。
まずは、今回ご紹介した基本的なグラフの種類と、それぞれのグラフがどのようなデータの表現に向いているのかを理解することから始めてみましょう。そして、ご自身のデータを使って実際に簡単なグラフを作成してみてください。経験を積むことで、どんなデータに対してどのグラフを使うのが最も効果的か、感覚的に分かるようになってくるはずです。
データ分析は、データから知見を得るだけでなく、その知見を「伝える」ことまで含めて価値が生まれます。一歩ずつ、グラフを活用して伝える力を磨いていきましょう。