データ分析を成功させるための基本の流れ【入門】
データ分析に興味を持ったけれど、「一体何から始めたらいいのだろう」「どういう順番で進めるのが一般的なの?」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。やみくもにデータを眺めるだけでは、求めている答えにたどり着くのは難しいかもしれません。データ分析には、効果的に進めるための基本的な「流れ」があります。
この流れを知ることで、分析の途中で迷子になったり、期待した結果が得られなかったりするリスクを減らし、着実に目的を達成できるようになります。ここでは、未経験の方がデータ分析をスムーズに進めるための、最も基本的な流れをステップごとに分かりやすく解説します。
ステップ1:分析の「目的」を決める
データ分析を始める上で、最も重要と言えるのがこの最初のステップです。なぜ、何のためにデータ分析を行うのか、その「目的」を明確に定義することから始めます。
目的が曖昧なままデータを見始めても、「何か面白い発見はないかな」と手当たり次第に探すことになりがちです。これでは時間ばかりかかってしまい、ビジネス上の具体的な課題解決にはつながりにくいでしょう。
例えば、「売上を改善したい」という漠然とした目的ではなく、「なぜ先月の特定商品の売上が落ち込んだのか原因を特定したい」「新規顧客の獲得コストを下げるには、どの広告チャネルが最も効果的かを知りたい」のように、具体的に解決したい疑問や達成したい目標を設定することが大切です。
この目的設定によって、次にどんなデータが必要になるか、どのような分析方法が適しているかの方向性が定まります。
ステップ2:必要な「データ」を集める
目的が明確になったら、その目的を達成するために必要なデータは何かを考え、実際に集めます。
例えば、「特定商品の売上低下原因を探る」という目的であれば、その商品の過去の売上データ、同時期の競合商品の動向、実施したキャンペーンの内容と効果、顧客からの問い合わせ履歴などが考えられます。
データは、社内の販売管理システム、顧客データベース、Webサイトのアクセスログ、アンケート結果、市場調査レポートなど、様々な場所に存在します。目的と照らし合わせて、どのデータが必要かをリストアップし、収集する作業を行います。
この段階では、全てのデータが完璧な形で揃っていなくても大丈夫です。まずは、考えられる範囲で必要なデータを集めることに注力しましょう。
ステップ3:データを「使える形」に整える(前処理)
集めたデータは、そのままでは分析に適さないことがほとんどです。例えば、同じ意味なのに表記が異なっている(例: 「株式会社」と「(株)」)、入力ミスで数値がおかしい、一部のデータが抜けている(欠損している)といった問題が見つかることがあります。
これらの「ノイズ」が多いデータを使って分析しても、正確な結果は得られません。そこで、データを分析しやすいように修正・加工する作業が必要になります。これを「データ前処理」や「データクリーニング」と呼びます。
具体的な作業としては、表記の統一、不要なデータの削除、欠損値の処理(平均値で補う、削除するなど)、データの並べ替えや結合などがあります。
この前処理の工程は、データ分析の全工程の中で最も時間がかかるとも言われます。地道な作業ですが、信頼できる分析結果を得るためには欠かせない重要なステップです。Excelの基本的な関数や並べ替え、フィルター機能などでもできる作業が多くあります。
ステップ4:データを「分析」する
データが分析できる状態に整ったら、いよいよ分析に移ります。ステップ1で設定した目的を達成するために、どのような切り口でデータを見ていくかを考えます。
例えば、「売上低下の原因特定」であれば、時期ごとの売上推移、顧客層別の売上、販売チャネルごとの売上などを比較・分析することで、どこに問題がありそうかを探ります。「新規顧客獲得コストの最適化」であれば、広告チャネルごとのコストと獲得顧客数を比較し、費用対効果を算出することなどが考えられます。
ここでは、データの合計、平均、割合を計算したり、データをグループ分けして比較したりといった、比較的簡単な統計的な考え方を使うことが多いです。高度な数学知識がなくても、Excelのピボットテーブル機能などを活用するだけでも、多くの発見が得られることがあります。
分析ツールを使うのはこのステップですが、まずはExcelなどの身近なツールで試してみるのが良いでしょう。
ステップ5:分析結果を「報告」し、「活用」する
データを分析して何らかの傾向や発見が得られたら、それを周りの人に分かりやすく伝え、実際の行動につなげることが最後のステップです。
分析結果は、数字や専門用語だけでなく、グラフや表などを使って視覚的に分かりやすく表現することが重要です。例えば、時系列グラフで売上の増減を見せたり、円グラフで顧客層の割合を示したりすることで、一目で状況を理解してもらいやすくなります。
そして最も大切なのは、その分析結果を元に「次に何をすべきか」という具体的なアクションを決定し、実行することです。売上低下の原因が特定できたら、それに対する改善策を講じる。効果的な広告チャネルが見つかったら、そこに予算を集中させるといったように、分析はビジネスを改善するための手段であることを忘れてはなりません。
分析結果を報告して終わりではなく、それを活用してビジネスに役立てて初めて、データ分析は成功したと言えるでしょう。
まとめ:データ分析の基本的な流れを意識しよう
データ分析の基本的な流れは、以下の5つのステップで構成されます。
- 目的設定: 何のために分析するのか、具体的な問いを立てる。
- データ収集: 目的達成に必要なデータを集める。
- データ前処理: 集めたデータを分析できる形に整える。
- 分析: データを様々な角度から調べて傾向や発見を得る。
- 報告・活用: 分析結果を共有し、次のアクションにつなげる。
この流れは、決して一方通行ではなく、分析の途中で目的を再確認したり、追加のデータが必要になったりすることもあります。しかし、この基本的なステップを頭に入れておくことで、闇雲に進めるよりもずっと効率的に、そして着実にデータ分析を進めることができるはずです。
まずは小さなテーマで良いので、この流れに沿って実際に手を動かしてみてください。きっと、データが語りかけてくる面白さや、ビジネスへの活用イメージが見えてくることでしょう。