データ分析はじめてガイド

ビジネスの「なぜ?」にデータ分析で答える方法【入門】

Tags: ビジネス, 課題解決, データ分析, 入門, Excel

はじめに:ビジネスの「なぜ?」とデータ分析

ビジネスの現場では、「なぜ売上が落ちたんだろう?」「どうすれば新しいお客様が増えるかな?」といった疑問が日々生まれます。これらの疑問に対し、これまでは経験や勘に頼って判断することも多かったかもしれません。

しかし、現代では「データ」が強力な味方になります。データ分析を活用することで、漠然とした「なぜ?」や「どうすれば?」に対して、より根拠に基づいた答えやヒントを見つけ出すことが可能です。

データ分析と聞くと難しく感じるかもしれませんが、未経験の方でも基本的な考え方を知り、少しずつ実践すれば、必ずビジネスでの課題解決に役立てることができます。この記事では、ビジネスの疑問にデータ分析でどうアプローチするか、その基本の考え方をご紹介します。

ビジネスの疑問をデータ分析の「問い」に変える

データ分析を始める最初のステップは、あなたが持っているビジネス上の疑問を、データで答えられる具体的な「問い」に変えることです。

例えば、「売上が落ちた」という漠然とした疑問だけでは、どのようなデータを見て、何を調べれば良いかが分かりません。これをデータ分析の問いにするには、以下のように掘り下げて考えます。

このように具体的にすることで、「2023年の下半期から、A商品の関東地方における20代女性向けの売上が特に落ち込んでいるのではないか?」といった、データで確認できる問いになります。

この具体的な問いが決まれば、次にどのようなデータが必要かが見えてきます。この例であれば、過去の売上データ(いつ、誰に、何を、いくらで売ったか)、顧客の年齢層や居住地域に関するデータなどが必要になるでしょう。

必要なデータを準備する

問いが明確になったら、その問いに答えるために必要なデータを集め、整理します。データは、社内の販売システム、顧客データベース、Webサイトのアクセスログ、アンケート結果など、さまざまな場所に存在する可能性があります。

データ分析の入門段階では、まずはExcelなどで扱える形式(表形式)にデータをまとめるのがおすすめです。

例えば、売上データであれば、以下のような項目を含む表を作成することをイメージしてください。

| 日付 | 商品名 | 販売価格 | 販売数量 | 地域 | 顧客ID | 顧客年齢層 | | :--------- | :------- | :------- | :------- | :----- | :----- | :--------- | | 2023/10/01 | 商品A | 3000 | 2 | 関東 | 001 | 30代 | | 2023/10/01 | 商品B | 5000 | 1 | 関西 | 002 | 40代 | | 2023/10/02 | 商品A | 3000 | 1 | 関東 | 003 | 20代 | | ... | ... | ... | ... | ... | ... | ... |

データは、分析しやすいようにきれいにする「前処理」が必要な場合もあります。例えば、入力間違いを修正したり、表記ゆれ(「東京」と「東京都」など)を統一したりといった作業です。これについては、別の記事でも詳しく解説しています。

データ分析の基本的なアプローチ例

データが準備できたら、いよいよ分析です。先ほどの「売上が落ちた原因は?」という問いを例に、いくつかの基本的なアプローチを見てみましょう。

  1. 期間で見てみる (時系列分析の基本)

    • 月の売上合計、週の売上合計などをグラフにしてみます。いつから売上が落ち始めたのか、落ち込みのペースはどうか、といった全体の傾向を掴むことができます。
    • Excelの折れ線グラフなどが役立ちます。
  2. 項目別に分けて見てみる (グループ分け・比較)

    • 商品別に売上合計を出してみます。「商品A」だけが落ちているのか、それとも全体的に落ちているのかが分かります。
    • 地域別に売上合計を出してみます。関東だけなのか、他の地域もなのかを見比べます。
    • 顧客年齢層別に売上合計を出してみます。特定の年齢層からの売上が落ちているかを確認します。
    • これらの集計は、Excelのピボットテーブル機能を使うと比較的簡単に行えます。
  3. 複数の項目を組み合わせて見てみる (クロス集計)

    • 「商品A」と「地域」を組み合わせて、地域ごとの商品Aの売上を見てみます。もし「関東のA商品」だけが顕著に落ちていれば、その組み合わせに問題がありそうだと推測できます。
    • Excelのピボットテーブルで、行と列に異なる項目を設定することで実施できます。

これらの基本的な集計やグラフ化を行うだけでも、データの中に隠されたパターンや変化が見えてくることがあります。

例えば、分析の結果、「2023年下半期に関東地方の20代女性による商品Aの購入数が減少している」という事実がデータから明らかになったとします。これが、「売上が落ちた原因」の有力なヒントになります。

分析結果から「なぜ?」のヒントを得る

データ分析によって、「どこで」「何が」「いつから」起きているか、といった具体的な状況が明らかになります。これがビジネスの「なぜ?」に対する直接的な答えになることもありますが、多くの場合、それは原因そのものではなく、「原因を示唆する状況」です。

例えば、関東の20代女性による商品Aの売上減というデータは、「なぜ減ったのか?」という問いに対する答えではなく、「関東の20代女性向けに何か問題が起きているかもしれない」というヒントです。

データ分析で見つかった事実をもとに、「もしかしたら、競合がその層向けに強力なプロモーションを仕掛けたのではないか?」「ターゲット層の好みが変化したのではないか?」「その地域の店舗で何か問題が起きているのではないか?」といった、さらに踏み込んだ「なぜ?」を考え、仮説を立てることができます。

データ分析で見つかった「状況」と、現場の担当者しか知らない「肌感覚」や「情報」を組み合わせることで、より正確な原因にたどり着ける可能性が高まります。データは万能ではありませんが、勘や経験だけでは気づけない重要な視点を与えてくれます。

次のステップ:仮説の検証とアクション

データ分析で得られたヒントをもとに仮説を立てたら、それを検証するためにさらにデータを集めたり、現場にヒアリングしたりといった次のアクションに移ります。

例えば、「競合のプロモーションが原因ではないか?」という仮説を検証するために、競合のSNSや広告出稿状況のデータを調べたり、店舗の店員に顧客の反応を聞いてみたりします。

このように、データ分析は一度やって終わりではなく、「疑問を持つ → 問いを立てる → データを集める・分析する → ヒントを得る → 仮説を立てる → 検証する → アクションにつなげる」というサイクルで繰り返し行うことで、継続的なビジネス改善に繋がります。

まとめ

ビジネスで生まれる様々な「なぜ?」や「どうすれば?」といった疑問は、データ分析によって解決への糸口を見つけられることが多くあります。

まずは、漠然とした疑問をデータで検証できる具体的な「問い」に変えることから始めましょう。そして、その問いに答えるために必要なデータを集め、基本的な集計やグラフ化といった分析を試みてください。Excelなどの身近なツールでも、基本的な分析は十分可能です。

データ分析は魔法ではありませんが、あなたのビジネスの課題を客観的な視点で見つめ直し、より効果的な打ち手を考えるための強力なツールです。未経験からでも、この記事でご紹介したような基本的な考え方から、ぜひデータ分析を始めてみてください。