ビジネスの疑問、どうデータ分析で答える?具体的な問題設定の方法【入門】
ビジネスの疑問、どうデータ分析で答える?具体的な問題設定の方法【入門】
「データ分析を始めたいけれど、具体的に何を分析すればいいのか分からない」「自分の仕事のどんな課題にデータが使えるんだろう?」
もしあなたがそう感じているなら、この記事はまさにあなたのために書かれたものです。データ分析は、ただデータを眺めることではありません。ビジネスで直面する様々な疑問や課題に対して、データに基づいて答えを見つけ、より良い判断を下すための強力なツールです。
でも、データ分析の最初のステップでつまずく人は少なくありません。その最大の理由の一つは、「何を明らかにしたいのか?」という「問い」が明確になっていないことにあるのです。
この記事では、データ分析の出発点となる「問い」を具体的に立てる方法を、未経験者の方にも分かりやすく解説します。
なぜデータ分析の前に「問い」が必要なの?
データ分析ツールを開く前に、まず考えるべきこと。それは、「あなたはデータを使って、どんな疑問に答えたいですか?」ということです。
例えば、「売上データを見てみよう」と漠然と考えても、何から手をつけていいか分かりません。しかし、「なぜ先月のA商品の売上が落ちたのだろう?」という具体的な疑問があれば、その答えを見つけるために必要なデータ(A商品の過去の売上、競合商品の動向、実施したキャンペーンなど)や分析方法が見えてきます。
目的(=問い)がはっきりしないままデータを触り始めると、時間ばかりかかってしまい、結局何も新しい発見が得られない、ということになりがちです。データ分析は、宝探しに例えられることがあります。どんな宝(答え)を探しているかが分からなければ、どこを掘ればいいか分からないのと同じです。
良い「問い」を立てるための3つのポイント
では、ビジネスの課題を解決に導くような、「良い問い」を立てるためにはどうすれば良いでしょうか?初心者の方が意識すべき3つのポイントをご紹介します。
1. 具体的にする
曖昧な問いではなく、具体的で焦点を絞った問いにしましょう。
- 悪い例: 「売上を分析したい」
- 良い例: 「なぜ、B支店の先月の売上が、目標の80%しか達成できなかったのだろう?」
- 良い例: 「どの顧客層が、リピート購入に繋がりにくい傾向があるのだろう?」
具体的にすることで、どんなデータが必要か、どんな分析をすれば答えに近づけるかが考えやすくなります。
2. データで答えられる問いにする
問いに対する答えが、現在または将来的に手に入るデータで検証できるものであることが重要です。
- 良い例: 「ウェブサイトのリニューアル後、問い合わせ数はどう変化したか?」(ウェブサイトのアクセスデータや問い合わせ数データで検証可能)
- 良い例: 「SNS広告を出したキャンペーンは、〇〇歳代の顧客獲得に繋がったか?」(SNS広告のデータ、顧客データで検証可能)
- 良くない例: 「社長の次の戦略は成功するか?」(データで直接的に予測・検証するのが難しい)
もちろん、仮説を立てることは重要ですが、データ分析で直接的に答えを見つけられる問いに焦点を当てましょう。
3. ビジネスアクションに繋がる問いにする
分析の結果が、ビジネス上の具体的な行動や意思決定に繋がるような問いを立てましょう。
- 良い例: 「解約が多い顧客は、どのような特徴を持っているか?」(特徴が分かれば、その特徴を持つ顧客層へのアプローチ方法を検討できる)
- 良い例: 「どの広告媒体からの顧客獲得単価が最も低いか?」(単価が低い媒体に予算を集中させるなど、広告戦略を改善できる)
- 良くない例: 「過去5年間の自社製品の色別の売上推移を細かく知りたい」(それ自体は面白い情報かもしれないが、それが分かったからといって、次に何をすべきかが見えにくい場合)
分析結果を「知って終わり」ではなく、「次に何をしようか?」に繋がる問いが、ビジネスで役立つデータ分析の鍵です。
身近なビジネス課題から「問い」を立ててみよう(具体例)
あなたの仕事の現場で、以下のような「困った」「知りたい」はありませんか?それを具体的な問いに変えてみましょう。
例1:売上に関する疑問
- 課題: 全体的に売上が伸び悩んでいる。
- 問いの例: 「どのエリアの売上が特に落ち込んでいるのだろう?」
- 問いの例: 「売上トップ5の商品は、顧客層に偏りがあるか?」
- 課題: 新商品の売れ行きが想定より悪い。
- 問いの例: 「新商品の購入者は、既存商品の購入者と比べて何が違うのだろう?」
- 問いの例: 「新商品のプロモーションは、ターゲット層に届いているか?」
例2:顧客に関する疑問
- 課題: 顧客の解約が多い。
- 問いの例: 「解約する顧客は、初回購入からどのくらいの期間で離れてしまうのだろう?」
- 問いの例: 「購入回数が多い優良顧客と、1回しか買わない顧客では、購入商品の種類に違いがあるか?」
- 課題: 新規顧客が増えない。
- 問いの例: 「新規顧客は、どのチャネル(ウェブサイト、紹介、広告など)から来ることが多いのだろう?」
- 問いの例: 「過去のキャンペーンで、新規顧客獲得に最も効果があったのはどれか?」
例3:マーケティング・商品に関する疑問
- 課題: ウェブサイトのアクセスはあるが、購入に繋がらない。
- 問いの例: 「ウェブサイト訪問者は、どのページで離脱しやすいのだろう?」
- 問いの例: 「特定のキャンペーンページからの訪問者は、通常の訪問者より購入率が高いか?」
- 課題: 新しい広告を始めたいが、どこに出すべきか分からない。
- 問いの例: 「当社のターゲット顧客は、どのメディア(SNS、ニュースサイト、雑誌など)をよく利用しているのだろう?」
- 問いの例: 「過去に実施したオンライン広告の中で、最もクリック率が高かったのはどのタイプか?」
このように、普段の業務で感じている「なぜ?」「どうなっているの?」を、具体的な問いの形にしてみましょう。これがデータ分析の第一歩です。
問いを立てたら、次に考えること
具体的な問いが立てられたら、次に「その問いに答えるために、どんなデータが必要か?」を考えます。
例えば、「なぜB支店の先月の売上が目標未達だったか?」という問いなら、
- B支店の過去の売上データ
- 他の支店の売上データとの比較
- B支店で先月実施したキャンペーンやイベントの情報
- B支店周辺の競合店の状況(これはデータ化が難しい場合もある)
- 天候や祝日など、外部要因のデータ
などが考えられます。
そして、そのデータが手元にあるか、どのように集められるかを確認します。Excelファイル、社内データベース、ウェブサイトのログ、アンケート結果など、データは様々な場所に存在します。未経験者の場合は、まずExcelなどの身近なツールで扱える範囲のデータから始めるのがおすすめです。
データ分析は、データそのものを見る前に、「何を知りたいか(問い)」「何のために知りたいか(目的)」「そのためにどんなデータが必要か」をしっかりと考えることから始まります。
まとめ:データ分析は「良い問い」から始まる
データ分析のスキルやツールを学ぶことはもちろん大切ですが、それ以上に、「ビジネス上の具体的な疑問や課題を、データで答えられる問いの形にする力」が、データ分析を成功させ、あなたのビジネスに役立てるための最も重要なスキルと言えるかもしれません。
ぜひ今日から、あなたのビジネス現場にある「なぜ?」「どうなっているの?」を、具体的な問いにしてみる練習を始めてみてください。その一つ一つの問いが、データ分析への扉を開き、あなたの仕事をもっと面白く、効果的なものに変えてくれるはずです。
次に、その問いに答えるために必要なデータをどう準備するかについて学んでいきましょう。